いらっしゃいませ

にほんご べんきょう してきて ください
いらっしゃいませ。ずっと試運転中です。予告なく変更しまくるつもりが仕様変更については手付かずです。

2018年5月17日木曜日

猫のいる部屋 1

やあ、良い子のみんな!良い子かな?
病気療養中のためしばらくお休み宣言をしたものの、興が乗ったので物語みたいなものを書いてみたら、意外にも入院前に書きあがってしまったので時限式で細々とupすることにしました。物語が完結する頃には復帰できてるんじゃないかな〜という希望的観測と共に。死後の世界を私なりに想像してみました。縁起でもないと思われる向きもございましょうが、どうかご笑納ください。
では行ってみよ!
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死んだ後に目覚めるといつもの朝が来ていた。
雨季の終わりが近いカリフォルニアの空は曇天模様。カーテンを開けると明け方に降った雨に洗われた木の幹の間から薄い霧をまとった大地が見下ろせた。

もうじきアーモンドの花が咲くだろう、そう思うと心は沸き立つ。乾季と雨季しかないこの土地では、季節が変化するものだと再認識させてくれるのは雨季から乾季へ移行するこのわずかな期間だけだ。アーモンドの花が散って本格的に乾季になれば、世界はもうそれしかないと思わせるほど太陽の季節が単調に続き、次の雨季が来るまでの間大地を焼き尽くすことになる。雨季になったらなったでこれまた毎日が曇天と霧の単調な世界になる。四季で月日を測ることはこの土地ではできない。かろうじて目白押しにやって来るイベントで歳月の流れを知ることはできるけど、あまりに単調な季節の中にいると時間の流れは掴みにくい。一体自分はどの季節に向かっているのやら…と。
アーモンドの花

牛乳とオレンジジュースをそれぞれコップに注いで朝食の支度をする。冷凍したワッフルをオーブンで温めてその上のコンロではお湯を沸かす。いつもはカリカリベーコンに目玉焼きを焼いたりするけど、今朝は独りきりだから昨夜の残りの野菜スープで簡単に済まそう。コップに残った牛乳を紅茶のカップに注いで食後のミルクティーを飲み干したら、さあ、仕事に出かけるか。

大学の駐車場まで車を走らせてバイト先のラボへ。いつもと同じ朝を迎えているはずなのに、何かおかしい気がする。違和感の理由はわからないけど何かがいつもと違う。忘れ物でもしたろうか?いや、これといって持っていくものなんか無い。ラボに行くと違和感はさらに増した。いつもと違う顔ぶれ、というか知らない人が実験室にチラホラ居る。私の所属するラボは退職間近な教授の部屋なのでもともと人が少ない。あまり英語が話せないくせに遊ぶ金欲しさに就労許可証をとってここで働き始めた私にとって職場で友達を作るのはかなりハードルが高かった。積極的にアメリカ人の友達を作ろうとはしなかったことが今は悔やまれる。とはいえ挨拶くらいはできる。こんな人、居たかしら?とおっかなびっくりで挨拶すると相手も別段気に留めた様子はなく普通に挨拶を返して再び自分の作業に没頭していた。その日は教授も現れず、数少ない仕事仲間のサイモンとミチコにも会えないまま仕事を淡々と終えた。

私の仕事は午前中だけ。なので仕事を終えるといつもは隣のラボにいる夫と誘い合わせて学食で昼食をとってから帰宅するのだが、今日は夫はいないのでスーパーで買い物をして帰宅する。帰り際に夫のラボを覗くがやはりここも見たことのない人が大勢ウロウロしている。中には知った顔もいて、その人はこちらに気づいて驚いたような顔をして笑顔で両の手を挙げてくれた。ビックリしたよのポージング。その親しみを込めた笑顔にホッとしたけど顔見知り程度の人だったので軽く会釈したらそそくさとその場を離れ、会話を交わすことはなかった。
こうしていつもと同じ昼が過ぎた。

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