いらっしゃいませ

にほんご べんきょう してきて ください
いらっしゃいませ。ずっと試運転中です。予告なく変更しまくるつもりが仕様変更については手付かずです。

2013年7月26日金曜日

歴史まんがのススメ

オオクニヌシといえば兎
本作の兎(イセポ)は相当 せくすぃ〜
そろそろ食べ物の話でも…と思っていたのですが、今月最後の話題なのでいっそオタク月間で押し通そう!ということで安彦良和です。

五月に『 イズモの諸君 』の中でこうの史代『ぼおるぺん古事記』について触れたばかりですが、先日なんとなく本屋で安彦良和『ナムジ』を購入。すっかり古事記ワールドに引き込まれてしまった。原田常次氏の『古代日本正史』の説を下敷きに書かれた『ナムジ』は顰蹙をかう向きもあるようだが一つの仮説として見るならこれもアリ。
古事記を読んだ後の疑問のひとつ、「出雲を舞台にした国譲りの後に、なんでまた遠く離れたヒムカ(日向)なんかにニニギは降臨したんだろ?」という疑問に合点のいく説明をしてくれた功績は大きい。(飽くまでも仮説ですが^^;)『古代日本正史』は未読ながら、仮説の一部を以下にチラリと紹介。

朝鮮半島を経由して、出雲を拠点に繁栄を築いた一族あり。同様に渡り来て北九州を拠点にした筑紫邪馬台(ヤマト)はイズモと戦乱を重ね、ついには日向の地に遷都を余儀なくされる。やがて邪馬台の将ニニギによる猛反撃が始まり…。その一方、はるか以前に邪馬台を離れざるを得ない事情を持った一族が瀬戸内を通って奥地に分け入り纒向(まきむく)の地で独自の文化を護り育んでいた。これなむ畿内大和(ヤマト)…。

先住であった倭人の他に存在した、国ツ神(くにつかみイズモ系)と天ツ神(あまつかみヤマト系あるいは天皇系)。何故、神を二つのグループに分ける必要があったのか。当時のお国事情なんかに想像を巡らせれば、まっこと空想歴史物語は面白い!
科学を下敷きに想像を巡らせた物語がSF(サイエンスフィクション)というジャンルを確立しているように、歴史を下敷きに想像を巡らせた物語HF(ヒストリカルフィクション?)が、もっと世に受け入れられても良いと思う。いや、実際にはそういうの沢山出てるけど、「たられば」みたいな本は受け入れても信憑性のある構想で話を書くと途端に「インチキ書くな!」と騒ぎ出す人がいるから不思議ふしぎ。

人気アニメーターだった安彦良和と宮崎駿。私の記憶が確かなら同時期に漫画連載を開始した二人は共に「アニメーターに漫画描かせてもロクなものじゃない」とケチョンケチョンにけなされていた(その多くは絵コンテと漫画は違う!という主張だった)。『アリオン』も『ナウシカ』も(奇しくも二つとも神話の人物名を冠している)私はどちらも夢中になって読んだクチだけど、子どもゴコロにも安彦さんが漫画のウデをメキメキあげて駿がいつまでたっても「漫画」は描けない人だったのが印象深い。
果たせるかな、気がつけば安彦さんはアニメから身を引いて今やそのスジ^^ では高名な歴史漫画家となりぬるを。「歴史漫画家、安彦良和が未来の歴史をついに連載開始!」という触れ込みで始まった『ガンダム ジ オリジン』は、ジオン公国の歴史をつまびらかにした名作ですが…それはまた、別の、お話。

来月からは、うまいものの話なんか始める予定。あくまでも予定。

2013年7月19日金曜日

相性物語

趣向を変えて今回のオタク談義は『タロットカード』です。私はド素人で嗜む程度にしか占いをやりませんが、どうしてなかなかタロットカードは奥深くて面白い。
うちの旦那などは「タロット占いをやり過ぎると死ぬ」という謎のジンクスを子どもの頃から信じているようですが、それが本当なら全世界のタロット占い師は絶滅してるってばよ。
9カードスプレッドで人間関係を占いました
思い当たるワードが展開されてかなり焦った
タロットの事をまるで知らないという方に簡単に説明。実は世の中のほとんどの人がタロットカードに触れたことがあるはず。なぜならタロットは大アルカナと小アルカナの二つのグループに分けられ、このうち小アルカナはトランプカードとして世界中に普及したから。対する大アルカナはドラマのシーンで怪しげな占い師が「死神」などのオドロオドロしいカードを提示したりするアレが詰まってます。正確には0番の「愚者」から始まって21番の「世界」でこの世の理(ことわり)を俯瞰できるようになっているものです。つまりトランプ占いをやったことのある人なら、それはすなわちタロット占い経験者なのです。さあウチの旦那!どーするよ?!

タロットで将来をズバリと当てることはできません。少なくとも私にそんな力は無い(^^;)ではタロットで何をするのか?それは物事の指針をはかること。
世の中は「巡り合わせ」で出来ています。それは用意された束から取り出した数枚のカードの並びと同じようなもの。引き抜いたカードの並びと明日我が身に起こる出来事が合致する確率はどれほどのもの?なんて言い出したらワヤになる話ですが、その日その時に占いをした、というそれすらも巡り合わせの成せる業。信じるも八卦、信じないも八卦。あくまでも運気の流れを大雑把につかむものとして利用しています。

タロットを用いたオススメの簡単な占いはスリーカードスプレッド。文字通り3枚だけめくります。今日一日の自分の行動予定を思い描きながらカードをシャッフルして展開。1枚目に全体運、2枚目は避けるべきことor 課題となること、3枚目は自分を守るカード。たったそれだけでその日の行動の指針が提示されるのです。
漫然と過ごしても一日は過ぎ去りますが、「今日はこうしよう!」という指針があるのと無いのでは一日の味わいも自ずと違ってきます。本来は自分の心構え一つで毎日の生活は変えられるので、実はタロットで占う必要は全然ない。私にとっての占いとはそうしたもの ^^;
むしろそうしたモノであるからこそ、それを逆手にとってタロットで一日の心構えを決めたって何の問題もない。その日その時に出た巡り合わせのカードに気持ちを托し新しい毎日を過ごす。それでいいのだ。

スピリチュアルな話題を期待した人、ゴメンね。最後にたかがカード、されどカードな話を一つ。よく言われることですがカードデッキには実は性格があります。子どもの頃に初めて手にしたデッキは気難しく近寄りがたい雰囲気を持っていました。近年、手に入れた初心者向きのものは柔和で打ち解けやすい雰囲気。それに気を良くして最近、気に入った絵柄で新たなデッキを入手したのですが、こちらは実に繊細。「デッキとの対話を楽しむ」というのが真のタロットの奥深さなんですね。興味を持たれた方、自分と相性の良いカードとの出会いを探してみませんか?

2013年7月12日金曜日

冬夜幻

前回、機動戦艦ナデシコの次回予告風に終わらせてしまった手前、見ないといけない気がして?ビッグオーの話題後編です。宣伝チックに行ってみよう!
全26話中、イチオシ作品は「Winter night phantom」またのタイトルを「悲恋!爆破一秒前」(ライナーノートにそういう系の邦題がちゃんとついてる^^)これに異存のある人はいないでしょう!というほどの名作です。
vous êtes gentil
軍警察の無骨者ダン=ダストン少佐が垣間見た幻は夢?それとも失われたメモリーの断片なのか…。幻の女が現れた時、二人に用意された結末(Fin)とは。

ロジャーは物語の終盤、幻の答えを考察しながらもフツリとその行為を止めてしまう。「失われた過去を掘り起こす必要はないだろう」と。謎は謎のままに。そこを含めて一話完結の物語としての完成度が高い珠玉の名作でした。パラダイムシティのカラクリを知った今は、この夢の決着なんて野暮なものを求める必要は感じない。「考えるな!感じろ」なビッグオーのエッセンスを体現したお話。

次点「Beck comes back」またのタイトル「誘拐犯の罠!ロジャー指名手配 !?」
インストルを差し置いてコレ?!と思われる方もおりましょうが、タイムボカンの悪玉トリオをオマージュしたベック一味は外せません!…と、それは冗談としても「メモリー」を題材にそれを失うことの焦燥感と全てを受け止めてゆく人々の愛しさを一番に押し出した作品はコレではないでしょうか?
あの日、私の前には彼女がいた
40年前のあの日、二人は恋におちて良き伴侶となった。すべてのメモリーを無くしたままに…。運命がもたらしたMr.ワイズマンが持つ哀しい秘密とは。

「記憶を失うってそんなに寂しいこと?」アンドロイドの問いに優しく応えるロジャーがホント憎いアンチクショーだぜ。そんなR.ドロシーのメモリーを守ろうとして彼女の不具合をあえて残す配慮をするのもまた心憎い。ロジャーとドロシーの心の交感を描いた点ではヘブンズデーの話よりもこちらを推したい。
悲劇のピアニスト
インストル
盲目の少女と嘘と
ヘブンズデー

『THE ビッグオー』全26話はバンダイビジュアルから絶賛販売中。その目でしかと見よ!(←次回、最強ロボ・ダイオージャの話は間違ってもしないからご安心を^^)

2013年7月5日金曜日

神の名において配役

久々にオタク談義『THE ビッグオー』のお話をいたしましょう。
『The ビッグオー』
バンダイビジュアル1999年
Cast in the name of God. Ye not guilty.
神の名においてこれを鋳造する。汝ら罪なし。
これは中世ヨーロッパの処刑道具に刻まれる言葉、と甲冑オタクの友人から聞いたことがあります。起動時モニターにこの言葉が出現する巨大ロボット。これを操る主人公ロジャー=スミスのお仕事は the 交渉人。
彼の住むパラダイムシティは全ての人が40年前のある日を境にそれ以前の記憶(メモリー)を無くしているという奇妙な世界。しかしそんな事は関係なしに人々の生活は営まれ、厄介な交渉を請け負うためにロジャーは今日も記憶喪失の街を行く。基本的に一話完結で人の記憶(メモリー)にまつわる少し物悲しいストーリーが展開されるこのアニメを私は毎週楽しみにしていた。子ども達に「母さんは、また変なの見始めて」という視線を送られながら…。ええ、お子ちゃまにこの耽美な世界はわかるまい!

アメリカ放映でとてつもなく人気を博したこの作品。アメリカ側の要請で3年もたってから2nd シーズン発表の運びになるのだが、新作も1st シーズンを上回る難解なラスト。久しぶりに鑑賞してネットに出回る考察なんか眺めて、むらむらと来るものがあった。だもんで私もマネして俺式解釈を書いてみまっす。

「あなたってサイテーだわ」
一話のハイライトと言えましょう
多くの方の意見によれば、記憶(メモリー)=脚本であり、キーパーソンのエンジェルはこの世界の演出家とされている。
作中「君こそがメモリーだったのだ」という台詞があり、放映当時は「この世界がエンジェルの内なる世界だったというエヴァ的オチか」と短絡して尻すぼみ感を抱いたまま鑑賞を終えた。ちなみに1st シーズンの最終回の感想は「ま、いっか」。謎を残したまま終わるのは当時よくある手法だったから多少それに慣れすぎていた感もある。アメリカさんはそーゆーの我慢ならなかったようですが。
今回、2nd シーズン制作の裏に謎の決着をつけるようアメリカから要請があった事を知り、その上で見直した時に2nd はかなり技アリという事に気がつきましたよ。まず2nd の第一話でアメリカに対する解答が早々と語られているではないですか。すなわち…
ロジャーは大道具を配した舞台の上に立ち、執事のノーマン相手に芝居じみた台詞まわしで二人の出会いのシーンを演じる。その劇中劇で事実上のメモリーなんて無いけどそんなの関係ないね宣言をしています。
失われた記憶(メモリー)=脚本、あるいは物語の設定
エンジェル=脚本家、あるいは演出家かプロデューサー
ロジャー=脚本家への交渉を依頼されたネゴシエーター

こう置き換えて見直せばしっくりくる。1st のラストでエンジェルが「まだ早すぎる」と思わせぶりな台詞を呟くのは、脚本を無視して動きはじめるキャラ(描いてるうちに作者が思ってなかった方向に登場人物が話を引っ張るという、アレかな?)に対する驚きともとれる。(26話予定だった番組が突如13話に凝縮されてしまったスタッフの嘆きかもしれませんが ^^;)
今から思えば1st で依頼を運んで来るのが幾度も身分を偽ったエンジェルだったのも象徴的。ロジャーに仕事を持って来てストーリーを動かすのがエンジェルの仕事(脚本家)だったと言える。関係ないけどその辺りから名前の由来はチャーリーズエンジェルだったのか??と妄想炸裂(それだとエンジェルがチャーリーになっちゃうけど)。
40年前の記憶(設定)なんか最初から無い。それに気づいた者達(=メモリーを甦らせた者)を消してまわるR.D.が Distiny(運命)と名乗ったのも面白い。40年前の設定がないのは言わばこの作品の宿命でもあるわけだ。

2nd のエンジェルが1st とは趣きを変え、何か逡巡したり彷徨してたりするのは、すでにあのエンジェル自体がパラダイムシティの人物として(キャラが)動き出したということ。だからラストシーンでドロシーと並んでしれっとして立っているのはおそらくパラダイムのエンジェル。彼女はこれからも「記憶をなくした街を舞台にした世界」の登場人物として物語を紡ぎ続けるのでしょう。
そして物語終盤でモニター室で涙を流していたエンジェル、あれこそがエンジェルの実体?でありロジャーの交渉相手。涙のエンジェルの肩にロジャーが手をかけた時点でドロシーが「ロジャー THE ネゴシエーター」と誇らかに名乗りをあげるのは、交渉を遂げた勝利宣言を表しているのではないでしょうか。さて気になる交渉の中身ですが…

パラダイムの創始者ゴードン=ローズウォータはメモリー(設定)なんて最初から存在しない事に気づき、その上でそのように世界を作り出した創造主の存在(意図?)を感じとる。「自分達は自由にやってもいいんじゃないか?」それを創造主に交渉してきて欲しいとロジャーに依頼。
これは巧妙なダブルミーニングではないか。すなわち、「40年前問題を解決しろ」と言ってきたアメリカTV局に対して「40年前の細かい設定なんて無いんです!記憶喪失の街を切り取って、そこを舞台に繰り広げられる物語を自由にやってもいいんじゃないか?」ということだったのだと。その交渉の物語が2nd シーズンだったのだと。だって現に1st シーズンは「40年前に何が起きたのか?」なんて事は関係なしに一つ一つの物語が充分に面白い作品に仕上がっていたじゃないですか。

エンジェルが泣いていたのはロジャーの説得でようやく初心に帰れたからではないでしょうか?そんな風に見ると、1st に比べるとやや色あせて見えていた2nd もその理由や切り返しの仕方に面白みが出て来る…かもしれない。
さあ!次回『THE ビッグオー』をみんなで見よう!←機動戦艦ナデシコ風