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2013年7月5日金曜日

神の名において配役

久々にオタク談義『THE ビッグオー』のお話をいたしましょう。
『The ビッグオー』
バンダイビジュアル1999年
Cast in the name of God. Ye not guilty.
神の名においてこれを鋳造する。汝ら罪なし。
これは中世ヨーロッパの処刑道具に刻まれる言葉、と甲冑オタクの友人から聞いたことがあります。起動時モニターにこの言葉が出現する巨大ロボット。これを操る主人公ロジャー=スミスのお仕事は the 交渉人。
彼の住むパラダイムシティは全ての人が40年前のある日を境にそれ以前の記憶(メモリー)を無くしているという奇妙な世界。しかしそんな事は関係なしに人々の生活は営まれ、厄介な交渉を請け負うためにロジャーは今日も記憶喪失の街を行く。基本的に一話完結で人の記憶(メモリー)にまつわる少し物悲しいストーリーが展開されるこのアニメを私は毎週楽しみにしていた。子ども達に「母さんは、また変なの見始めて」という視線を送られながら…。ええ、お子ちゃまにこの耽美な世界はわかるまい!

アメリカ放映でとてつもなく人気を博したこの作品。アメリカ側の要請で3年もたってから2nd シーズン発表の運びになるのだが、新作も1st シーズンを上回る難解なラスト。久しぶりに鑑賞してネットに出回る考察なんか眺めて、むらむらと来るものがあった。だもんで私もマネして俺式解釈を書いてみまっす。

「あなたってサイテーだわ」
一話のハイライトと言えましょう
多くの方の意見によれば、記憶(メモリー)=脚本であり、キーパーソンのエンジェルはこの世界の演出家とされている。
作中「君こそがメモリーだったのだ」という台詞があり、放映当時は「この世界がエンジェルの内なる世界だったというエヴァ的オチか」と短絡して尻すぼみ感を抱いたまま鑑賞を終えた。ちなみに1st シーズンの最終回の感想は「ま、いっか」。謎を残したまま終わるのは当時よくある手法だったから多少それに慣れすぎていた感もある。アメリカさんはそーゆーの我慢ならなかったようですが。
今回、2nd シーズン制作の裏に謎の決着をつけるようアメリカから要請があった事を知り、その上で見直した時に2nd はかなり技アリという事に気がつきましたよ。まず2nd の第一話でアメリカに対する解答が早々と語られているではないですか。すなわち…
ロジャーは大道具を配した舞台の上に立ち、執事のノーマン相手に芝居じみた台詞まわしで二人の出会いのシーンを演じる。その劇中劇で事実上のメモリーなんて無いけどそんなの関係ないね宣言をしています。
失われた記憶(メモリー)=脚本、あるいは物語の設定
エンジェル=脚本家、あるいは演出家かプロデューサー
ロジャー=脚本家への交渉を依頼されたネゴシエーター

こう置き換えて見直せばしっくりくる。1st のラストでエンジェルが「まだ早すぎる」と思わせぶりな台詞を呟くのは、脚本を無視して動きはじめるキャラ(描いてるうちに作者が思ってなかった方向に登場人物が話を引っ張るという、アレかな?)に対する驚きともとれる。(26話予定だった番組が突如13話に凝縮されてしまったスタッフの嘆きかもしれませんが ^^;)
今から思えば1st で依頼を運んで来るのが幾度も身分を偽ったエンジェルだったのも象徴的。ロジャーに仕事を持って来てストーリーを動かすのがエンジェルの仕事(脚本家)だったと言える。関係ないけどその辺りから名前の由来はチャーリーズエンジェルだったのか??と妄想炸裂(それだとエンジェルがチャーリーになっちゃうけど)。
40年前の記憶(設定)なんか最初から無い。それに気づいた者達(=メモリーを甦らせた者)を消してまわるR.D.が Distiny(運命)と名乗ったのも面白い。40年前の設定がないのは言わばこの作品の宿命でもあるわけだ。

2nd のエンジェルが1st とは趣きを変え、何か逡巡したり彷徨してたりするのは、すでにあのエンジェル自体がパラダイムシティの人物として(キャラが)動き出したということ。だからラストシーンでドロシーと並んでしれっとして立っているのはおそらくパラダイムのエンジェル。彼女はこれからも「記憶をなくした街を舞台にした世界」の登場人物として物語を紡ぎ続けるのでしょう。
そして物語終盤でモニター室で涙を流していたエンジェル、あれこそがエンジェルの実体?でありロジャーの交渉相手。涙のエンジェルの肩にロジャーが手をかけた時点でドロシーが「ロジャー THE ネゴシエーター」と誇らかに名乗りをあげるのは、交渉を遂げた勝利宣言を表しているのではないでしょうか。さて気になる交渉の中身ですが…

パラダイムの創始者ゴードン=ローズウォータはメモリー(設定)なんて最初から存在しない事に気づき、その上でそのように世界を作り出した創造主の存在(意図?)を感じとる。「自分達は自由にやってもいいんじゃないか?」それを創造主に交渉してきて欲しいとロジャーに依頼。
これは巧妙なダブルミーニングではないか。すなわち、「40年前問題を解決しろ」と言ってきたアメリカTV局に対して「40年前の細かい設定なんて無いんです!記憶喪失の街を切り取って、そこを舞台に繰り広げられる物語を自由にやってもいいんじゃないか?」ということだったのだと。その交渉の物語が2nd シーズンだったのだと。だって現に1st シーズンは「40年前に何が起きたのか?」なんて事は関係なしに一つ一つの物語が充分に面白い作品に仕上がっていたじゃないですか。

エンジェルが泣いていたのはロジャーの説得でようやく初心に帰れたからではないでしょうか?そんな風に見ると、1st に比べるとやや色あせて見えていた2nd もその理由や切り返しの仕方に面白みが出て来る…かもしれない。
さあ!次回『THE ビッグオー』をみんなで見よう!←機動戦艦ナデシコ風

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