いらっしゃいませ

にほんご べんきょう してきて ください
いらっしゃいませ。ずっと試運転中です。予告なく変更しまくるつもりが仕様変更については手付かずです。

2014年7月18日金曜日

すき焼きすき

右手の暖簾が、すき焼きちんや
手前の階段を地下に潜れば
レストランのちんや亭
いつか行こう、行かねばならぬと思っていた浅草の老舗すき焼き店『ちんや』に行ってきましたよ。感動が新しいうちに備忘録。  

さて『ちんや』とはまた珍妙な名前。そも、この店は江戸時代においては大名屋敷に愛玩動物を納めていたペットショップ『狆屋』がはじまり。屋号はその名残。文明開化とともに花開いた牛鍋文化を浅草で担い続けた老舗中の老舗なのですが、知名度は今半ほどではないのが不思議といえば不思議。全国的な展開をしていないことと、店に風情がありすぎて気おくれしちゃうのが原因でしょうかね。なにせ広〜い玄関に下足番がちゃんと控えているスタイルのお店はそれだけで高級店のかほり漂う。
予約を入れなかったのでまずは待ち合いに通される。表通りから見えないように仕切られたホールの片隅に応接セットがしつらえてあり、ほおずきを眺めながら待つ事しばし。予約を入れると個室に通される、なんて情報もあったのですが敢えて予約ナシで入店。どぜうや鰻屋の古い店舗に見られるごとく、広間に配された座卓で他所の卓の団らんを感じながら牛鍋をつつくのも古き良き浅草の風情があって私は好き。
ところがその日、支度が整って通されたのは4Fの個室。一歩入ったら「あらまあ素敵!」小振りな和室にはレトロな絨毯が敷かれ、これまた年季の入った小さなテーブルセットが配されている。4Fにはこの他にも掘りごたつ式の和室などいろいろなタイプがあるらしい。これは通うのが楽しみになる。また来よう。

お通しは冬瓜とホタテの煮物

料理はすき焼きとしゃぶしゃぶがあるのですが、初志貫徹のすき焼きぷり〜ず。肉のランクでお値段が変わります。赤身3,500円、霜降り7,500円、両方楽しめる盛り合わせ5,500円。量はすべて125g。中年には適量である。もちろん赤身と霜降りの両方楽しませていただきますよ、てなわけで真ん中の「楓」を2人前お願いしま〜す。待ち合いで眺めたお品書き「本日の変わりザク(野菜)」である茄子一皿700円も追加。すき焼きに茄子、なんという斬新さ。広島出身の人は松茸も入れるよ〜とか言ってましたが、すき焼きは実に奥が深い。これにビールと〆のきしめんを一人前だけチョイス。お鉢や刺身が付くコースにしなくても、かなり満腹になりました。

この日のお部屋は「馬道」こんな感じ
明治開花絵図が各部屋に飾られているそうです
では回想を…
お通しを頂戴している間にお店の人がササッと最初の一盛りを用意してくれる。この辺りは今半と一緒。脂を敷いて長ネギを焼き、お肉をのせたら割り下をジュュ〜ッ!溶き卵にくぐらせてから「どうぞ」と供されるすき焼きのなんと美しき。明治の人はこんな良い肉は食べてなかったろうなと思いつつ、そもそも現代人の私だって普段はこんな良い肉でお家すき焼きはしないぞ、と我に返る。肉の違いが醸す味の違いに酔いしれている間に、鍋を綺麗に整えたお店の人が退場。ここからは旦那と二人っきりで無心に鍋をつつくひと時。なるほど、個室には個室の良さがありますね〜。ゆったりと時間が流れて心ゆくまで堪能。なんというか食べ物に向かう集中力が違う^^ 。しみじみと美味しかったです。
茄子は2種類。どちらも油通ししてありツヤツヤ。これを鍋に入れると肉の美味しい脂を茄子が吸い込み、しかも茄子の味わいも損なわれることなく…むは〜、なんて美味しいんだ!

食べたばかりなのに、また食べに行きたいと思う。それがすなわち美味しいということ。お肉も割り下も茄子も、味が良いことの他にお店の雰囲気がまた一層気持ちを引き立たせる。古びた調度品や建物に難色を示す人もあるだろうが、脂煙を吸い込んだ柱やふすま障子の風情とこの店の歴史の深さが何よりの味わい。この床柱は時代を越えて人々の人生の一コマを眺め続けてきた。その風格に勝るものはありません。
さてさて、料金には一人当たり400円(夜は500円)の奉仕料が加算されます。奉仕と呼ぶにふさわしい、たおやかな接客をしていただきました。「10%のサービス料」と言われるよりは最初から「お一人幾らでお世話いたします」の方が酒飲み夫婦には安心。しかも気兼ねなく話しかけられる気がする(当社比)。お店は場所柄、年末年始がやはり一番混雑するそうです。夏のこの時期は逆に狙い目。人々が鍋から遠ざかるこの季節、鰻代わりの滋養にすき焼きなんぞ、いかがでしょうか。

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