セクシーボイスアンドロボ 小学館 "Anime is the life history!" |
絵柄の圧倒的な違いが独自性を醸す大きな要因になるのは間違いないのだが、絵だけで人はここまで惹き付けられない。やはり根底に流れる思想のようなもの、そこに共感するから人は作品や作家のファンになる。と、漫画好きとしてはそう思いたいんだけど、実際には「漫画は絵しか見ないよ〜ん。吹き出しだって長いと読まないし〜」なんて人もそれなりに多い。恋愛と一緒ね。人となりを知ってから恋におちてゆくタイプと一目惚れから始めたいというタイプとが居るけど、その違いをいかんともしがたい。んで、その一目惚れタイプの人からはウケが悪そうなのが黒田硫黄だ。絵柄は筆でさらさらと描いた、いわば鳥獣戯画風味。じゃあ読めば惚れるのか?と聞かれるとそれもややツライところ。端的に言ってその作風は「わかりにくい」。『ミシ』なんか好きだけど、どう説明したらいいかわからないみし。
じゃあ一体この人の作品の何処を推したらよいのか?考えるにそれは「視点」。読んでいて、はっとするセリフが飛び出す。誰もが思い当たるけど見落としがちな、ある日ある時の心の動き。そんなものに焦点を合わせて巧くセリフにして取り出す。そういう仕事をする人です。(わかりにく〜ぃ)以下はセクシーボイスアンドロボより抜粋。
その日その時というのは二度と来ない。その時どうだったかが巡り合わせという事だ。
もっとうまく出来る人がいればその人に投げ出していたかも。でもそれをやる人は他にいなかったの。ひとつだけわかった。明日は私のかわりは誰もいない。今救えるのは宇宙で私だけ。
共感とはバックグランドや心的状況、その他もろもろに作用されてあらわれる心の動きなんだろうけど、この漫画を読んで胸に訴えかけて来たメッセージのなんと心強かったことか。(自分が受け止めた範囲で語ってます^^;)作中、もっとも胸を打った言葉はコレ。
意志でなく才能が行く道を選ぶ。そういうことがあると思うのよ。
黒田硫黄はかくして漫画を描く道を歩んだのでしょう。体が弱くなければもっとたくさん彼の作品が読めるのに、とそこだけがなんとも口惜しいです。みんなで応援するみし!
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