裁きを待つ者が地獄の手前でウロウロおろおろする場所、そこが煉獄(当社調べ)。身の丈に合っているかどうか定かではないバッグを入手しようとする私の不安と戸惑いとヘンな高揚感は何に例うべきや。
あの日、頭を冷やすためにブランドショップから
日を改めて地元デパートへ再確認のために出向いた。あのバッグを利用する際にするであろうココ一番装備を身につけて、気分はすっかりボスキャラ討伐の旅路。
ショップ入り口に展示された目的のバッグ。あぁ、やはりアレはいいものだ〜。覚悟を決めて店員さんに色味をよく見せて欲しいと頼む。自然光に近い場所へ移してもらい、姿見前に通され全体像をチェック。靴、コート、グローブ、このバッグのためにピックアップしてきた手持ち装備とのバランスは…大丈夫!この最終装備なら遜色ない。問題はこの格好以外のコーディネートを私にひり出せるかどうかだが、この際そこは目をつぶろう。ロープレの勇者だってだいたいいつも同じ格好してることだし。
こうして念願のセミフォーマルバッグを手に入れて、私の鞄ジプシーの旅は終わった。…と思わせて、この話にはまだまだま〜〜だ続きがある。
買い物後の満足感に浸りながらバレーパーキングで自分の車を待つ間、待ち合いで居合わせた一家の奥さんがブランドバッグを持っていた。いつもなら気づかないが、先刻まで居た店に陳列されてたバッグなので流石の私もすぐにそれとわかった。というかね、バッグがやたら悪目立ちして目で追ってしまう。新品でピカピカつやつやの革製品だからというのもあるが、それだけが原因ではない。
中略
色々書いてみたけど他所様の格好をアレコレ言える資格もないので、そこは割愛。端的に言うと「奥さん!雑誌の言う普段使いにまんまと騙されたね」という感じ(前回参照)。都内レベルの普段着ならブランドバッグでも浮かなかったろうが、その一家は私が毎日隣県(農村部)の農道で見かけるレベルの普段着だったのだ。ある意味、素朴で飾らない格好なのに奥さんの右肩だけ何故そんなに飾り立ててしまったか…まさに浴衣に高級エナメル草履状態。
一家はオプション装備満載のごついワゴン車に乗り込んだが、そのナンバーはドンピシャリ、隣県もの。隣県を腐すつもりはないので念のため。意外と日本は平均化、画一化された世界ではないということが言いたい。「普段」の一言ひとつとっても事情は色々違う。なのに情報発信源(都市部)だけが日本のスタンダードのようにいつも皆を錯覚させて混乱(混沌?)を巻き起こす。(それとも私が知らないだけで実はこのアンバランスコーディネートが日本のスタンダードになっているのか?)
車といいバッグといい、おそらく我が家なんかよりずっとお金持ちなのが分かるのに、この間違い探しな感覚をどう表現したら良いものか。なるほど私も旦那の協力でブランドバッグを手にすることはできたが、果たしてそれで満足していて良いものだろうか…。
優れた馬術を体得している人は、どんな馬でも見事に乗りこなす。それが名馬を与えられれば、見事な技を馬とともに披露して見る者を魅了するはず。しかし大した技を持たぬ乗り手が名馬だけ手に入れたとしても、それは互いの持ち味を台無しにしかねない。人と鞄もまた、かくのごとし。
とまあ、そんな事を考えた。私は馬術なんか、やりませんがね。
「気をつけなければいけない」そう思ったブランドショップの帰り道。道具は使いこなしてこそ。これからは安いのも高いのも、どんなバッグでも見事に使いこなせるように励みましょうぞ。私のオシャレ道はまだ始まったばかりなのであります。
これにて私の鞄談義は、一巻の終わりにございます。また来年もよろしくお願いします。良いお年を!